◆隠れていたウイルスが復活  
 「帯状疱疹」は身近な病気で、つづらご、はくじゃ、おびくさ、胴まきなど、日本各地でさまざまな呼び方があります。
 原因は、水ぼうそうを起こすものと同じ水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスです。水ぼうそうは多くの人が子供の頃にかかり、1週間程度で治ります。しかしウイルスが消滅したわけではなく、体の神経節(神経の細胞が集まった部分)に潜伏しているのです。そして、過労やケガ、大きなストレス、病気、手術、免疫抑制薬の使用や高齢化などにより、免疫力が低下するとウイルスが復活します。活動を再開したウイルスは、 皮膚に帯状の水ぶくれを作ります。これが「帯状疱疹」です。
 
   
 
◆放置すると後遺症の心配も  
 前兆として、1週間ほど前から違和感やぴりぴりした痛みを感じることがあります。水ぶくれは左右どちらかの半身だけに出ることが特徴です。放置すると神経痛などの後遺症に悩まされることがあるため、早期治療が必要です。適切な治療をすれば、1週間ほどで水ぶくれはかさぶたになり治癒します。  
   
 
◆治療は飲み薬が基本  
  治療の基本は抗ウイルス薬の服用。軽症の場合は外用薬のみで、症状が重いときは点滴薬を使用します。
1)抗ウイルス薬
【ゾビラックス(アシクロビル)、バルトレックス(バラシクロビル)】   
ウイルスの遺伝子DNAに作用します。ゾビラックスは1日5回、バルトレックスは1日3回に分けて飲みます。発症初期(皮疹出現から72時間以内)に使用するのが早く治すコツ。効果 が現れるのは1〜2日後からで、2〜3日で服用を止めると、治りが遅くなったり悪化したりする場合があるため、最低でも5〜7日間は飲み続けましょう。副作用は少ないほうですが、下痢や吐き気などの胃腸症状、頭痛、めまいなどがあります。特に、腎臓の悪い人やお年寄りは量 を減らす必要があります。
【アラセナA(ビダラビン)軟膏】
 抗ウイルス薬を含む軟膏で、初期の使用が効果的です。
2)その他の飲み薬
 帯状疱疹の痛みには、痛み止めの薬で対処します。帯状疱疹後の神経痛には、メキシチールやテグレトール、または抗うつ薬のトリプタノールを用いることがあります。ビタミンB12のメチコバールは、末梢神経の働きを改善する作用があるとされます。
 
   
■文/伊藤 由紀(医学博士)
日本医療薬学会認定薬剤師・指導薬剤師。 国内・海外学会発表回数は45回以上、研究会発表多数。
著書に「From Ph. 由紀」
http://yakujien.com
 
 
    >病院のクスリを読む バックナンバー  
     ・第7回 通 風のクスリ
     ・第6回 皮膚に塗るクスリ
     ・第5回 血液をサラサラにするクスリ
     ・第4回 不眠症のクスリ
     ・第3回 糖尿病のクスリ
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     ・第1回 血圧のクスリ