第6回 皮膚に塗るクスリ
 
 
ステロイド外用剤の誤解をとく
◆タイプや種類で異なる吸収率  
体内で作られる「副腎皮質ホルモン」という物質を合成した塗り薬で、皮膚の表皮から浸透して炎症部に働きます。ステロイド外用剤は強さによって5段階に分類されます。
 【I群(弱い)】を1〜5レベルとすると、
 【II群(中くらい)】は10、
 【III群(強い)】は50、
 【IV群(たいへん強い)】は100、
 【V群(もっとも強い)】は200になります。
I群とIV群では200倍の開きがあり、タイプによって強さが大きく異なることを理解しましょう。 ステロイド外用剤には、同じ製品でも軟膏・クリーム・スプレー・液体・ジェルと様々な種類があります。 一般的に、軟膏よりクリームが塗りやすくベトツキがありません。頭皮に使用する場合は液体やジェルが使いやすいでしょう。 軟膏よりクリーム、クリームよりスプレー・液体・ジェルの吸収率は高いため、作用が強く出る傾向にあります。 また使用する部位によっても吸収率は大きく異なります。 手や足の裏など皮膚の厚い部分には強めのタイプ、まぶた、陰部など皮膚の薄いところは弱いタイプを選択するといいでしょう。ほおの吸収率は腕の13倍のため、腕と同じものを塗ると作用が強く、副作用が出やすくなります。 また陰部は腕の42倍の吸収率なので、医師の指導を受けて使用しましょう。 乳児は皮膚表面の防衛機能が未熟なため吸収率が高く、特に注意が必要です。  
◆ステロイドの副作用とは?
 これまでステロイドは注射や飲み薬による強い副作用で「恐い薬」という印象を与えることがありました。しかし近年は、ステロイドに対する使用方法などが確立し、使い方と選び方を間違えなければ、比較的安全に使うことができます。ただし作用の強いステロイド外用剤を広範囲に長期間使用すると、次の副作用が出る場合があります。
  1.皮膚が委縮して薄くなる
  2.皮膚の赤みが増す
  3.皮膚の感染症(たむし、おできなど)に
    かかりやすくなる
  4.紫斑(皮膚の内出血)ができやすくなる  
 全身的に現われる副作用は、大量長期投与が問題です。最も強い群に属する外用剤を1日10g以上使用した場合、副腎機能に抑制がかかり、全身的な副作用が生じるといわれます。いずれにしても医師の指導をきちんと受けることが、ステロイド外用剤の鉄則です。
 
文/伊藤 由紀(医学博士)
日本医療薬学会認定薬剤師・指導薬剤師。
国内・海外学会発表回数は45回以上、研究会発表多数。
著書に「From Ph. 由紀」
http://yakujien.com