第5回 血液をサラサラにするクスリ
 
     
ワルファリン(抗凝固剤)は ビタミンKで効き目が弱まる    
 今回は、血液サラサラの薬に関するお話です。脳梗塞や心筋梗塞などの予防に使用される薬に「ワルファリン(抗凝固剤)」があります。これは血を固まりにくくし、血栓ができるのを抑えるというもの。薬の構造がビタミンKと似ているため、肝臓でビタミンKが関与して血液の凝固因子をつくる過程に作用して、血液を固まりにくくするのが特徴です。ワルファリンは、他の薬と一緒に飲むと効き目が強くなったり、逆に弱くなってしまうことがあるので気をつけましょう。また、薬だけでなく、ビタミンKによっても効き目が弱くなるので、食べ物との飲み合わせにも注意が必要です。その代表的なものが、納豆、そしてクロレラ食品や青汁といったビタミンKを多く含む食品です。いずれも健康食品として人気の高いものですが、ワルファリンを服用中の患者さんは避けるべきでしょう。一方、抗血小板薬といわれるグループの薬は、同じように血液を固まりにくくしますが、納豆、クロレラ食品・青汁との飲み合わせは問題ありませんのでご安心ください。  
     
ワルファリン服用中に 注意したい「飲み合わせ」    
 納豆菌は腸の中でビタミンKの合成を促進するため、納豆を食べるとワルファリンの効き目が悪くなり、72時間たっても回復しないとされます。たとえ、わずか20gの納豆でも影響が出るともいわれているので、食べないようにしましょう。ただし同じ大豆食品でも、豆腐や煮豆には納豆菌が含まれていないので大丈夫です。  ビタミンKは緑黄色野菜に多く含まれ、特にサプリメントで人気の高いクロレラ食品や青汁はビタミンKの含量 が多く、摂取を控えることが望ましいでしょう。また毎日、緑黄色野菜や海草類を大量 に摂取するのも避けましょう。目安としては緑黄色野菜1日250gを1週間連続して摂取するとワルファリンの効果 が減弱するといわれています。これをビタミンKに換算すると、1日250μ g-500μgが上限とされています。もちろん普段の付け合わせ程度であればまったく問題はないので、バランスのよい食生活を心がけましょう。     
     
文/伊藤 由紀(医学博士)
日本医療薬学会認定薬剤師・指導薬剤師。
国内・海外学会発表回数は45回以上、研究会発表多数。
著書に「From Ph. 由紀」
http://yakujien.com